自殺とされたOpenAIの内部告発者の親が「自殺ではない」と主張する理由――「争った跡がある」口封じか?
OpenAIの内部告発者スチール・バラジは11月26日に遺体で発見された。検死官は自殺と断定している。しかし両親は自殺を信じておらず、その不可解な点を述べた。
両親「息子は自殺ではない」
明けましておめでとうございます。本年一発目。
さてOpenAIの内部告発者が、自宅アパートで遺体で見つかった件を以前書いた。まずはその経緯をご覧頂ければ、これから書くストーリーがわかりやすいと思う。↓
スチール・バラジ(26)は、11月26日にサンフランシスコの自宅アパートで死亡しているのが警察によって発見された。検死官事務所は自殺と断定し、事件性はないと発表された。
バラジは元OpenAIで人工知能AIチャットボット「ChatGPT」の開発を行っていたが、疑問を感じて退社した。その後内部告発を行ったが、そんな中で死亡したのである。
この事件でバラジの両親が「息子は自殺ではない」と主張し、FBIの調査を求めている。
バラジの母親ポアニマ・ラマラオ氏はXに投稿した。
私たちは私立探偵を雇い、死因を解明するために2度目の検死を行なった。私的な検死では、警察が発表した死因は確認できなかった。
スチールのアパートは荒らされ、バスルームには争った形跡があり、誰かが彼を攻撃したようだ。
イーロン・マスクは「これは自殺とは思えない」と返信した。
https://x.com/elonmusk/status/1873367418556612894
両親のインタビューが公開されている。
著作権侵害でOpenAIを告発
バラジは2020年にOpenAIに入社し、ChatGPTの開発に携わっていたが、AIによる学習が著作権を侵害していると疑問を感じ、2024年8月に退社した。
その後ニューヨークタイムズで内部告発を行った。
https://www.nytimes.com/2024/10/23/technology/openai-copyright-law.html
バラジはブログを立ち上げ、10月24日に「AIは著作権で保護されたデータのコピーを作成している」とする記事を投稿したが、彼はこの記事だけを残してこの世を去った。
母親によれば、バラジはいつもはおとなしい性格だが、OpenAIに対しては非常に怒っていたといい、「彼らを潰す」と言っていたという。、
バラジはIT技術者として非常に優秀で、いくつかのプログラミングコンテストで優勝しており、OpenAIに入社する前は、Scale AI、Helia、Quoraなどの企業に勤めていた。
検死官はたったの40分で自殺と断定
サンフランシスコから40マイルほど離れたユニオン・シティに住んでいた母親のラマラオ氏は、息子と3日間連絡が取れなかったため、行方不明の届けを出したという。
届け出を受けてサンフランシスコ警察がバラジのアパートを捜索したところ、遺体を発見した。
母親によれば、検死官が現場に到着してからたったの40分で自殺と判断したと述べた。その理由は、彼以外に誰もおらず、近くに銃があったからだという。
素人でもできるな。
メンタル病歴もなく、元気だった
両親によれば、バラジに精神疾患の病歴はなく、遺書も見つかっていないという。
息子と最後に話したのは父親のバラジ・ラママーシー氏で、遺体で発見される4日前の11月22日に電話で、誕生日記念のロサンゼルス旅行について15分ほど話したという。
「彼は写真を送ってくれて、上機嫌だった。」
母親によると、警察を呼んでアパートのドアを開けてもらう時、中に入ることを許されなかったという。また検死報告書も受け取っておらず、現場の写真も見せられてなく、監視カメラの映像も公開されていないと語った。
腑に落ちないと感じた母親は、私立探偵を雇って2度目の検死を行ったが、自殺の証拠はなかったため、FBIの調査を要求したという。また「浴室で争った形跡があった」と述べた。
「何かを探した形跡がたくさんあり、ゴミ箱が落ちていたり、シンクの近くに血痕があったり、血が流れた跡があった。」
残念ながら弁護士が協力してくれないため、現在遺族はGoFundMeでクラウドファンディングを開始し、訴訟のための資金を集め、詳細な調査を行っているとのことだ。
死亡時、パソコンの電源が入っていた
バラジは12月2日にAP通信などメディアのインタビューを計画し、その準備を進めていたようだ。
しかしそれは行われることはなかった。翌3日にAP通信からバラジの携帯電話に着信があったという。
バラジはOpenAIに対して法的措置をとろうとしていたといい、その証拠を持っていた可能性がある。
ニューヨークタイムズは2023年12月に著作権侵害でOpenAIとマイクロソフトを提訴したが、11月18日に裁判所に提出した書類の中で「関連性のある文書」を持つ人物としてバラジの名前を挙げている。つまり証拠を示唆していた。
それから約1週間後、バラジは遺体で見つかった。
母親によると、遺体で発見された時にパソコンの電源が入っていたと語っている。バラジは秘密主義者でパスワードもかけていたので、どうやってアクセスしたのか驚いたという。
Googleドライブのファイルは消され、ブラウザのキャッシュには何も残されていなかったため、法的監査で調査する予定だという。
イーロン・マスクとOpenAI
イーロン・マスクはバラジの両親を支持しているが、まだ連絡はないという。
イーロンはOpenAIの共同設立者だが、2018年2月に役員を辞任している。OpenAIは2015年12月に非営利団体として設立されたが、近年は利益を追求して営利企業化している。
イーロンはOpenAIが非営利団体から営利企業に移行したと主張し、合意に反するとして11月29日にカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で訴訟を起こした。
訴状によると共同設立者で現CEOのサム・アルトマンは、非営利団体であり続けることを約束したにも関わらず、営利を追求していると訴えている。イーロンはその約束を信じて多額の寄付をしていた。
さらにOpenAIとマイクロソフトは、投資家が他のAI企業に資金を提供することを禁じているという。
イーロンも独自の「xAI」を開発しており、その覇権争いもあるのでは。
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